オプションの代表的な評価式
source from http://www.sumitomotrust.co.jp/FPM/business/derivative280/p510.html
このモデルの基本的考え方は,「オプションと原資産である株式からなるリスク・フリーのポートフォリオの構築が可能としたうえで,裁定機会が存在しないという仮定のもと,微小時間のリスク・フリー・ポートフォリオの収益率が非危険利子率に等しくなる」というもので,これは,以降に発表され,今日の金融界で使用されているほとんどのオプション評価式の基礎にもなっています。
ここで,「リスク・フリーのポートフォリオの構築が可能である」理由としては,原資産である株式の価格とオプションの価格はともに同じ要素,つまり株式価格の
金融工学の悪魔 騙されないためのデリバティブとポートフォリオの理論 [ 吉本佳生 ]
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このモデルでは,
・
株式の空売りが可能である
・
取引コストや税金は存在しない
・
オプション期間中の株式配当は存在しない
・
短期の非危険利子率 r
は期間を通して一定である
・
リスクを伴わない裁定機会は存在しない
等の仮定のもとで,原資産の価格過程を次の確率微分方程式によって表現しています。
【式1】
ここで,
S (t
) は t
時点の原資産価格, μ
は期待収益率, σ
はボラティリティ,Z
(t )
は標準ブラウン運動を意味しています。この【式1】を,伊藤の公式(Ito's Lemma)を利用して変形することによって,ヨーロピアン・タイプのコール・オプションおよびプット・オプションの評価式が導出されています。以下に無配株式のヨーロピアン・コールとヨーロピアン・プットの評価式をあげてみます。
ここで,
N (d
i )
は標準正規分布の累積密度関数になります。つまり,平均が
0 で,標準偏差が1の標準正規分布に従う変数が x
よりも小さくなる確率を意味します。この値は,標準正規分布における
N (x
)
の表や表計算ソフトの関数を利用することにより,容易に算出することができます。
【式2】の左辺を
e−rT で囲むと,次のように変形できます。
【式3】
この【式3】の
N (d2 )
はリスク・ニュ−トラルな状況のもとで,オプションが行使される確率を表しています。また
SN (d1 )e
rT
は,同じくリスク・ニュートラルな状況のもとで,満期時点で
S >
X となった場合には S
,それ以外の場合には 0
となる変数の期待値を表しています。
ここで,実際に各要素を次の値と仮定した場合に,ヨーロピン・コールオプションの価格がいくらになるかについてみてみましょう。今,株価が100,オプションの期間が3カ月,ストライク・レートが110,リスク・フリー・レートを1%,ボラティリティを30%とした場合,各要素は,
となります。この結果を【式2】に代入すると,ヨーロピアン・コールオプションの価格は
約2.57と求めることができます。
次に,各要素の変化がコール・オプションの価格にどのような影響を与えるかについてみてみます。まず,その他の条件を同じとしたうえで,ストライク・レート
X のみを変化させた場合のコール価格の変化は次のグラフのとおりとなります。
つまり,
X が上昇することによりコール・オプションは,よりアウト・オブ・ザ・マネーへと変化していくため,その価格は低下していくことになります。また,逆に
X が低下すると,オプションはイン・ザ・マネーへと変化するため,オプション価格はより高くなる方向へと変化していくことになります。
次に,ボラティリティのみを変化させた場合のコ−ル・オプションの価格変化についてみてみます。ボラティリティが上昇するということは,株価の変動幅がより大きくなることを意味しています。これにより,オプションがイン・ザ・マネーとなる可能性も高くなります。すなわち,ボラティリティが上昇すればコール・オプションの価格も高くなり,逆にボラティリティが低下する局面では,オプション価格も低下することになります。
オプション期間の変化についてみてみると,期間が長くなればそのぶんタイム・バリューは大きくなるため,オプションの価格も上昇し,逆に期間が短くなればタイム・バリューも減少する(タイム・ディケイ)ためオプションの価値は低下することになります。
最後に,金利先物が原資産である場合の評価式を参考としてあげておきます。
C:コールオプション価格
e :ネピアの数(すう)
q :原資産利回り
t :期間
S:原資産価格
N(d):標準正規分布の累積確率密度関数
r :安全利子率(非危険利子率)
k :行使価格
d :累積密度関数N()の変数
σ:ボラティリティ(予想変動率)
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